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人工透析

学習コーナー
   
   

血液透析とは
腎不全になると水分や老廃物が排泄されなくなり体に溜まります。
透析とは、おもに体内に溜まった余剰な水分や老廃物を除去するための治療です。
通常、前腕に作ったブラッドアクセス(血管)に針を2本刺し、血液を体外に導き出します。その血液を、透析器(ダイアライザー)に通すことで水分と老廃物の除去を行い、再び体内に血液を戻します。
1回に4~5時間透析を行うことによって、体全体の水分や老廃物を正常値に近い値にすることが出来ます。しかし、水分や老廃物はまた溜まってしまいますから、1週間に2~3回透析を受けなければなりません。

ダイアライザーについて
中空糸と呼ばれるストロー状の細い糸を数万本束ねたもので、その中を血液が、外側を透析液が流れ毒素を除去しています。中空糸とは、極小の孔の開いた透析膜をストロー状に丸めた物です。血液中の老廃物や水分や体に必要な電解質は、この孔を介して血液と透析液の間を通行します。しかし、赤血球や白血球などは、この孔よりも十分に大きいため、透析液側には出て行きません。

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血液透析の働き
①血液中の老廃物の除去
老廃物とは、蛋白質の燃えカスである尿素窒素(BUN)や、クレアチニン(Cr)、尿酸(UA)などのことです。透析では、血液をダイアライザーに通すことで拡散の原理が働き、これらの物質が透析液側に捨てられます。これを4~5時間繰り返すことで、血液から老廃物を取り除きます。

②水分の調節
血液がダイアライザーを通る時に、透析液側に機械的に陰圧(引っ張る力)を発生させることで、血液から水分を引き出す(除水)ことができます。これによって、体に溜まった余分な水分を取り除き、ドライウェイト(標準体重)まで除水します。
水分を引く量は、透析装置できちんとコントロールされています。

③電解質のバランスの調節
血液の電解質濃度(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、クロール、重炭酸、リンなど)を調節します。体に不要な物は取り除き、必要な物は補います。

④血液を弱アルカリ性に保つ
健常者の血液のpHは7.4(7.35~7.45)で、弱アルカリ性に保たれていますが、腎不全になると酸性物質が腎臓から排泄されない為血液中に溜まり、pHが酸性に傾きます。
透析液に重炭酸イオンを含むことで、透析により血液を中和し、正常の状態に保つことができます。


ホルモンについて
腎臓は、造血刺激ホルモンの産生、ビタミンDの活性、レニン分泌(血圧を上げる)などのホルモンに関する重要な働きをしていますが、人工透析ではそれらを代行することまではできません。造血刺激ホルモンの産生低下に対しては、エリスロポエチンの注射で補充します。活性型ビタミンD産生低下に対しては、活性型ビタミンD製剤の内服や注射で補充します。
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当院で施行している血液浄化療法
HD (hemodialysis:血液透析)
最も一般的に行われている血液浄化療法です。
通常、週3回(1回4~5時間)で腎臓の機能を代行します。
拡散、浸透、限外濾過の3つの物理化学的な原理を応用したもので、小~中分子量物質の除去に優れています。

ECUM(extracorporeal ultrafiltration method:体外限外濾過法)
透析後半の血圧の低下、頭痛、足のつり等の症状のみられる患者様の除水に使用しています。ダイアライザーに透析液を流さずに、限外濾過のみにより過剰な体液を除去する事ができます。
透析液を流さない為物質の移動が少なく、浸透圧が血漿とほぼ等しく生体内のNa濃度を変えずに多量に過剰体液、Naを除去できます。

*老廃物は殆ど除去されず、水分のみ除去されます。

HF(hemofiltration:血液濾過法)
緑内障、心包炎、心不全、透析困難症、透析アミロイドーシスの患者様に使用しています。
透析液を流さずに限外濾過によって血液から大量の体液を除去しこれを補充液(電解質液)で補充する事により、老廃物の除去及び電解質の是正を行っています。中~大分子量物質の除去効率を高める事ができます。小分子量物質の除去がHDに比べ劣ります。

HDF(hemodiafiltration:血液透析濾過法)
HDを行いながらHFと同じように限外濾過により大量の水分を除去し、これを補充液(電解質液)で補充しています。HDの小分子量物質が多く除去できる長所と、HFの中~大分子量物質が多く除去できる長所を兼ね備えています。
当院では、on-lineHDFとoff-lineHDFを行っています。

on-line HDF
関節痛(アミロイド滑膜炎)、皮膚掻痒、血圧低下による透析困難症、イライラ感、不眠、restless legs syndrome、β2-MGの除去、除去効率の向上・改善を目的として使用しています。置換液に、エンドトキシンカットフィルターを通した透析液を使用することで、容易に大量置換を行うことができます。大量置換することで、小分子から大分子に至るまで効率良く除去できます。

DFPP(double filtration plasmapheresis , 二重膜濾過血漿分離法)
適応疾患は、マクロブロブリン血症、悪性関節リウマチ、多発性骨髄腫などです。
孔径をより小さくした膜で血漿を濾過し病因関連物質や自己抗体などを除去する目的で行っています。中分子量以上の物質を中心に廃棄し、アルブミン分画は患者自身へ返します。
この方法では、血漿の一部が廃棄される為、アルブミン液などを補充液として使用します。

LDL吸着(low density lipoprotein apheresis )
適応疾患は、家族性高コレステロール血症、慢性動脈閉塞症、巣状糸球体硬化症です。
LDL(低比重リポ蛋白)吸着カラムに患者血清を灌流させることで、患者血中のLDLを選択的に吸着・除去する方法です。

処方透析
患者様ごとの状態に応じた透析液やダイアライザーを使用し、透析を行っています。


低々カルシウム透析
カルシウムが高くなった患者様に対して、通常よりカルシウム濃度の低い透析液を使用して、血中濃度を正常値まで下げることができます。透析液のカルシウムの濃度を個人用の透析装置にて通常透析液(2.5~3.0mEq/l)より低い2.0mEq/lに設定しています。


高ナトリウム透析

透析による低血圧の患者様に対して、個人用の透析装置にて通常(142mEq/l)より高いナトリウム濃度(143~150mEq/l)の透析液を使用して、血圧が下がりにくい透析を行っています。喉が渇くことがあるので徐々に通常濃度に戻していきます。
ダイアライザー(透析器)について
患者様の残存腎機能、体格、年齢、血液検査データにあわせて、生体適合性の優れたダイアライザーを選択しています。
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検査データについて
尿素窒素(BUN)
蛋白質の代謝産物であり、透析効率だけでなく食事によって値が影響を受けます。
BUN上昇の原因:蛋白質の摂り過ぎ、透析不足など
BUN下降の原因:蛋白質の摂取不足

クレアチニン(Cr)
筋肉の代謝産物で、筋肉量、運動量の多い人は高値を示します。食事には関与しない為、透析効率をみる為の良い指標になります。

ナトリウム(Na)
塩分を取りすぎると血液中の塩分濃度が上がる為、口渇を引き起こし水分摂取量が増えます。
すると循環血漿量が増加し、心臓や血管に負担がかかり、むくみや血圧上昇等の症状が出ます。

カリウム(K)
カリウムの多い食品の摂り過ぎや透析不足などで高くなります。
目標値は透析前5.5mEq/l未満、透析後は3~3.5mEq/lです。
5.5mEq/l以上は高カリウム血症で、重篤な不整脈を起こし、心電図にも特有の変化がみられます。3.5mEq/l以下は低カリウム血症で、筋脱力や麻痺などが起こります。


カリウムを多く含む食品の例
果物類…バナナ、メロン、かき、みかん、りんご、アボガド等
野菜類…ほうれんそう、ブロッコリー、筍、にんじん、枝豆、グリンピース等
イモ類…さつまいも、里芋、板こんにゃく等
以上の食品の摂り過ぎには注意しましょう!

カルシウム(Ca)
Ca値が低いと骨がもろくなります。Ca値が高いと骨以外の場所にCa沈着を起こしやすくなります。目標値は8.4~9.5mg/dlです。
9.5mg/dl以上は高カルシウム血症で、骨からのカルシウム放出亢進、腸管からのカルシウム吸収亢進、炭酸Ca・ビタミンD3剤の内服等が原因になります。
8.4mg/dl以下は低カルシウム血症で、骨塩の溶出減少、腸管からのカルシウム吸収減少等が原因になります。

リン(P)
血液中のPが持続して高いと、骨以外の場所に沈着(異所性石灰化)を起こします。また、低すぎても低P血症を起こし、骨軟化症を起こす可能性があります。
目標値は3.5~5.5mg/dlです。
高P血症の原因は、食事によるもの、二次性副甲状腺機能亢進症、腎からの排泄低下、組織障害による細胞内Pの細胞外液中への流出などです


リンを多く含む食品の例
そば、玄米、ピーナッツ、骨付き小魚、干物、レバー、ハム、ウインナー、卵黄、チーズ・牛乳などの乳製品、練り製品、インスタント食品等
以上の食品の摂り過ぎには注意しましょう!

インタクト-PTH(intact-PTH )
高値の状態が続くと、骨からCaが抜けて、骨がもろくなります。また、低くすぎても骨以外にCa沈着を起こしやすくなります。
目標値は、150~300pg/mlです。高値の原因は、二次性副甲状腺機能亢進症です。

ヘマトクリット(Ht)
血液全体を100%として赤血球の占める割合をいい、赤血球の大きさ、数を反映します。
目標値は28~32%程度です。 
腎不全患者のHt値は低下し、貧血になります。
主な原因として、腎不全では、腎臓からのエリスロポエチン(造血ホルモン)の分泌不足があるため、定期的な検査で確認する必要があります。

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高血圧について
腎不全の高血圧の原因は、主に、尿として排泄できなくなった水分が体内に貯留するためです。過剰な水分・塩分摂取による体重増加は心臓に負担をかけます。また、高血圧は動脈硬化など、血管に悪影響をあたえます。この様に、高血圧や水分の過剰な貯留は生命予後に関わる心不全などに発展する危険性が高いので注意が必要です。
透析間の体重増加率は、前回の透析終了体重から、どれくらい体重が増えたかを表します。水分増量指導に用いる場合、以下のように目標値を設定します。(一般的にこの目標値内に増量を抑えると透析中の血圧下降等の合併症を起こしにくいといわれています。)


目標   ●1日あき・・・ドライウェイトの3%以下  ●2日あき・・・ドライウェイトの5%以下
ドライウェイトとは体に余分な水分がない状態で、透析終了の目標体重になります。血圧は高くなく、手足や顔にむくみがなく、透析中急激な低血圧がおきないという条件を満たす体重をいいます

 

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PTA(経皮的血管拡張術)
平成12年2月より、当院では血管拡張術(以下PTA)を始めました。従来はシャント閉塞に対してのシャント手術が主流でしたが、このPTAはシャント閉塞を予防する方法です。
その方法とは、まず血管造影をして血管内の狭窄部位を確認した後、拡張したい部位までバルーンカテーテル(細い管の先に風船のように膨らむものが付いているワイヤー)を血管内に入れます。
位置を決めたらバルーンを膨らまし拡張します。
このPTAの利点は、①入院が不要、②傷が残らない、③短時間で処置が終わる等が挙げられます。



上の画像の様に、PTA前後で比べると、狭くなっていた血管が拡がっているのがわかります。

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人工透析と腎不全に関しての良くある質問
Q1 透析治療をうけながら、仕事は続けられますか?
充分続けることが出来ます。月・水・金曜日は夜間透析を行っていますから、仕事を終えて17:00~19:00までに来院すれば間に合います。
また、仕事の都合で透析日(時間)の変更や、出張や旅行等では他院への出張透析も出来ます。

Q2 腎不全になると食生活はどうなりますか?
腎不全状態になると尿が出なくなりますので、尿として排泄される水や老廃物が体の中にたまってしまいます。そのために、水分や塩分の摂取を制限して体重をコントロールします。次にカリウムやリン等も制限が必要になります。

Q3 透析治療は毎日うけなければならないですか?
透析治療は1週間に2~3回で、1回の透析時間は4時間が目安です。

Q4 治療は痛いですか?
透析治療を受けるにあたり、シャント(動脈と静脈をつなぎ静脈の血流を増やす手術)を手首(一般的には利き腕の反対)に造ります。こうして造った血管をブラッドアクセスといいます。
そのブラッドアクセス(血管)に血液を体外に導き出す針(動脈側)と体内に返す針(静脈側)を2本さして透析を始めます。針をさすときは痛いですが、透析中は痛みはありません。

Q5 治療費はどの位かかりますか?
一ヶ月の治療費は、医療保険で300,000~400,000円ですが、各加入の保険者へ特定疾病療養受療証を申請すれば自己負担額は最高10,000円です。

Q6 治療は自宅で受けられますか?
現在、当院で自宅で透析治療をされている患者さまはおりませんが、国内では自宅で透析治療をしている例はあり可能ではありますが、それなりの設備の準備と事前に教育を受ける必要がありご希望があればできます。

Q7 透析治療開始後どの位生きられますか?
現在の透析治療は、医療技術の進歩と共に透析装置・透析液・人工腎臓の開発が進み、透析患者さまは、健常人と同じように寿命を全うされます。
当院では平成17年7月現在、220名の方が透析治療を受けられていますが、その内20人の方が、透析治療を20年以上受けられています。

Q8 治療は一生続けなければならないのですか?
基本的には一生続けなければなりません。しかし、腎臓移植も症例が増えています。また、ライフスタイルに合わせて、CAPD(腹膜透析)もしています。

Q9 透析治療中はどんな感じですか?
透析治療を初めて初期の頃は、腎不全状態のため尿毒症(頭痛・吐き気・めまい・むくみ・食欲不振等)があり、透析で毒素を抜くために、不均衡症候群や血圧低下等がある人がいますが、そのようなことも慣れるに従いよくなり、基本的には特別不快な症状を感じる事はありません。

Q10 CAPD(腹膜透析)とはどの様なものですか?
お腹に透析液を入れ、本人の腹膜(腎臓に近い働きをする)を使って透析を行う方法です。1日4回の透析液の交換を自分で行います。自宅で出来ます。

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腎臓の働き
腎臓は、腰の上あたりに左右1つずつあり、そら豆の形をした臓器です。
1個の大きさはこぶしより小さく、成人で150g前後です。

①血液中の老廃物の排泄
血液を濾過して、血液の中の老廃物を除去し、尿をつくります。
そして体内から除去します。

②水分の調節
尿の濃さや量を調節し、体の中の水分を一定に保っています。

③電解質のバランスの調節
血液の電解質濃度(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど)を調節します。

④ビタミンDの活性化
ビタミンDを活性化して、カルシウムの吸収を促進します。

⑤血液を弱アルカリ性に保つ
血液中のpHは7.4で、弱アルカリ性に保たれています。
腎臓で、重炭酸を作り、体に溜まった酸性物質を中和し、血液を弱アルカリ性の状態に保っています。

⑥造血刺激ホルモンの分泌
腎臓からは造血刺激ホルモン(エリスロポエチン)というホルモンが分泌されます。これが不足すると貧血になります。

⑦血圧の調整を行う
血圧が下がり、腎血流量が減少すると、腎臓からレニンというホルモンが分泌され、血圧を上げるように働きます。

⑧不要になったホルモンの分解・排泄を行う
体にとって不要なホルモンを選択し、壊したり、捨てたりしています。

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